圧縮記帳適用後の固定資産の取得価額はどうなるの!?
2019年10月1日から消費税率が8%から10%に変更されたことに伴い、飲食店や小売店を営んでいる事業者は、軽減税率対策補助金(正式名は中小企業・小規模事業者等消費税軽減税率対策補助金)を使って、レジの入れ替えや改修を実施しているところもあろうかと思います。
そこで、軽減税率対策補助金を使ってレジを購入した場合の法人税法上の取扱いについて、解説したいと思います。
※新型コロナウイルスの影響により、固定資産の取得に伴う各種補助金や助成金についても同様の処理が可能なケースもありますので、補助金などの交付手続きだけでなく、購入後の取扱いもフォローする必要がございます。
Ⅰ.レジを購入した場合の取得価額の範囲
固定資産を購入した場合の取得価額とは、簡単に言いますと「購入対価と購入に伴う付随費用」となります。ですので、レジを購入した場合の取得価額は、一般的にレジ本体と設置費用の合計額が取得価額となります。
Ⅱ.特例
レジなどの固定資産を購入した場合の取得価額は、原則、資産計上となりますが、下記の場合には、資産に計上することなく、費用処理が可能となります。
1.取得価額が10万円未満の少額減価償却資産(一時に費用処理)
→参考となりますが、法人税施行令第133条では、下記の通り規定されております。
内国法人がその事業の用に供した減価償却資産(第48条第1項第6号及び第48条の2第1項第6号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるものを除く。)で、前条第1号に規定する使用可能期間が1年未満であるもの又は取得価額(第54条第1項各号(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第1項において同じ。)が10万円未満であるものを有する場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
2.取得価額が20万円未満の一括償却資産(原則3年間で費用処理)
→参考となりますが、法人税法施行令第133条の2では、下記の通り規定されております。
内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が20万円未満であるもの(第48条第1項第6号及び第48条の2第1項第6号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条の規定の適用を受けるものを除く。)を事業の用に供した場合において、その内国法人がその全部又は特定の一部を一括したもの(適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(以下この条において「適格組織再編成」という。)により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)から引継ぎを受けた当該被合併法人等の各事業年度において生じた当該一括したものを含むものとし、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(適格現物分配にあつては、残余財産の全部の分配を除く。以下この条において「適格分割等」という。)により分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(以下この条において「分割承継法人等」という。)に引き継いだ当該一括したものを除く。以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額(適格組織再編成により被合併法人等から引継ぎを受けた一括償却資産にあつては、当該被合併法人等におけるその取得価額)の合計額(以下この項及び第12項において「一括償却対象額」という。)を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を36で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額(適格組織再編成により被合併法人等から引継ぎを受けた当該被合併法人等の各事業年度において生じた一括償却資産につき当該適格組織再編成の日の属する事業年度において当該金額を計算する場合にあつては、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を36で除し、これにその日から当該事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算した金額。次項において「損金算入限度額」という。)に達するまでの金額とする。
3.取得価額が30万円未満の中小企業者等の少額減価償却資産(年間300万円までは一時に費用処理)
→参考となりますが、租税特別措置法第67条の5では、下記の通り規定されております。
第42条の4第8項第7号に規定する中小企業者(同項第8号に規定する適用除外事業者に該当するものを除く。)又は同項第9号に規定する農業協同組合等で、青色申告書を提出するもの(事務負担に配慮する必要があるものとして政令で定めるものに限る。以下この項において「中小企業者等」という。)が、平成18年4月1日から令和4年3月31日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満であるもの(その取得価額が10万円未満であるもの及び第53条第1項各号に掲げる規定その他政令で定める規定の適用を受けるものを除く。以下この条において「少額減価償却資産」という。)を有する場合において、当該少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき当該中小企業者等の事業の用に供した日を含む事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。この場合において、当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(当該事業年度が1年に満たない場合には、300万円を12で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。
Ⅲ.圧縮記帳とは
軽減税率対策補助金などの補助金や助成金の交付を受け、レジなどの固定資産を購入した場合には、圧縮記帳という制度を使って、その補助金相当額を固定資産圧縮損として損失処理をし、かつ、その補助金相当額を固定資産から減額することとなります。
圧縮記帳とは、税金が免除されるわけではなく、課税の繰り延べとして翌年度以降に繰り延べる制度となります。
参考となりますが、法人税法第42条では、下記の通り規定されております。
内国法人(清算中のものを除く。以下この条において同じ。)が、各事業年度において固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金その他政令で定めるこれらに準ずるもの(第44条までにおいて「国庫補助金等」という。)の交付を受け、当該事業年度においてその国庫補助金等をもつてその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合(その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定した場合に限る。)において、その固定資産につき、その取得又は改良に充てた国庫補助金等の額に相当する金額(以下この項において「圧縮限度額」という。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法(政令で定める方法を含む。)により経理したときは、その減額し又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
Ⅳ.圧縮記帳を適用した場合の判定は
軽減税率対策補助金を利用してレジなどの固定資産を購入した場合の減価償却資産の取得価額は、法人税法施行令第54条第3項より、その圧縮記帳による補助金相当額を減額した後の金額で判定することとなります。
参考となりますが、法人税法施行令第54条第3項では、下記の通り規定されております。
第1項各号に掲げる減価償却資産につき法第42条から第50条まで(圧縮記帳)の規定により各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合には、当該各号に掲げる金額から当該損金の額に算入された金額(法第44条の規定の適用があつた減価償却資産につき既にその償却費として各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合には、当該金額の累積額に第82条(特別勘定を設けた場合の国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮限度額)に規定する割合を乗じて計算した金額を加算した金額)を控除した金額に相当する金額をもつて当該資産の同項の規定による取得価額とみなす。
Ⅴ.まとめ
新型コロナウイルスの影響による経営判断もございますが、軽減税率対策補助金の交付を受けて、レジの入れ替えや改修などを行った場合は、圧縮記帳を適用することにより、当期に費用計上できる金額が大きくなり、課税の繰り延べが可能となります。
固定資産の圧縮記帳後の帳簿価額が30万円未満となる場合は、「消耗品費や事務用品費」として費用処理することが可能となり、レジの購入額や改修費用を全額当期の費用として計上することができます。
また、新型コロナウイルス対策として、固定資産取得に伴う各種補助金や助成金についても圧縮記帳が適用できるケースもございますので、補助金などの交付手続きだけではなく、購入後の取扱いもフォローする必要があるため、税理士等の専門家に相談する必要がございます。
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