青色申告が取消された場合の再申請の方法とは!?
一般的な法人は、会社設立時などに本店所在地所轄の税務署へ「青色申告の承認申請書」を提出し、税務署から承認(ほとんどは自動承認)を得て、承認後は青色申告書を提出しているかと思いますが、その後、会社が忙しい等の理由により、期限内に申告書を提出しない場合には、青色申告の承認申請書が取り消されることがあります。
そこで、今回は、青色申告の承認申請書が取り消された場合の対応について、解説したいと思います。
Ⅰ.青色申告とは
法人が、法人税法の定めるところに従って一定の帳簿書類を備え付け、納税地の所轄税務署長に青色申告の承認申請をして、その承認を受けた場合には、青色申告書を提出することができることとなります。
この青色申告をした法人に対しては、税務上の各種特典が設けられております。
Ⅱ.青色申告の各種特典とは
中小企業である法人の青色申告の主な特典は、主に下記のものがあります。
- 青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金の翌期以降の繰越し
→欠損金を翌期以降に繰り越すものとなります。
- 欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
→欠損金を前期に繰り戻して前期納税した法人税額の還付を受けるものとなります。
- 30万円未満の少額減価償却資産を原則、全額費用処理
→1事業年度ごとに300万円まで全額費用処理ができるものとなります。
- 各種特別償却や特別控除の適用
→租税特別措置法に規定されている設備投資による減税や給与等の引き上げによる減税などを受けることができます。
Ⅲ.青色申告の承認申請が取り消される条件とは
法人の青色申告の承認取消しについては、法人税法第127条に規定されておりますので、こちらに準じて取扱われます。
- 帳簿書類を提示しない場合
帳簿書類の備付けや記録・保存(帳簿書類の備付け等)とは、物理的に帳簿書類が存在することを意味するだけではなく、税務職員に提示することも含まれております。
ですので、税務調査の時に税務職員から帳簿書類の提示を求められたにもかかわらず、その提示を拒否した場合には、青色申告の承認の取消事由に該当することとなります。
一般的には税務署からの要求は何度か行われますが、いずれも拒否した場合は、提示がされなかった最も古い事業年度以後の事業年度について取り消されます。
- 税務署長の指示に従わない場合
帳簿書類の備付け等について、税務署長の指示に従わない場合には、この指示に係る事業年度以降の事業年度について取り消されます。
税務署長の指示に応じるよう説得されても、なお指示に従わない場合に承認が取消されます。
- 隠ぺい、仮装等の場合
次のいずれかに該当する場合には、その事業年度以降の事業年度について取り消されます。
(1) 無申告のために所得金額の決定をした場合又は所得金額の更正をした場合において、更正所得金額のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(不正所得金額)が、その更正所得金額の50%を超える場合
(2) 欠損金額を減額する更正をした場合において、その更正により減少した部分の欠損金額のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額(不正欠損金額)が、当初の申告に係る欠損金額の50%を超える場合
(3) 帳簿書類への記載等が不十分である等のため、推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合
上記(1)、(2)のケースで、不正所得金額と不正欠損金額が500万円未満の場合は除かれます。
- 無申告または期限後申告の場合
2期連続して期限内に申告書を提出しない場合には、取り消されます。
この場合、2期目の事業年度以後の事業年度について、取り消されます。
Ⅳ.青色申告の再承認
青色申告の取消となった場合でも、再度、青色申告の承認を受けることが可能となります。
例えば、期限後申告が2期連続で続いた場合には、本店所在地所轄の税務署から「青色申告の承認の取消通知書」が届くこととなりますが、1期遅れただけでは、取り消しとはなりません。
つまり、2期連続で遅れた場合に青色申告の承認が取り消されることとなります。
この場合、提出期限に遅れた1期目の申告は青色申告が維持されますが、2期目の申告は青色申告が取消されて、白色申告となります。
一般的には、再度、「青色申告の承認申請書」を提出し再承認を受けることになりますが、青色申告の取消の通知日から1年間は、「青色申告の承認申請書」の再提出することができないため、注意が必要となります。
例えば、3月決算法人が、平成30年3月期と平成31年3月期の2期連続で期限後申告を行い、令和02年1月に「青色申告の承認の取消通知書」が届いた場合には、下記例示の通りとなります。
1年間は承認申請書の再提出はできませんので、令和03年3月に再提出し、令和04年3月期から青色申告の再承認となります。
青色申告の承認申請書は、青色申告の適用を受けたい事業年度開始の日の前日までに提出しなければなりません。
ですので、最低でも3期は、白色申告が続くことになり、青色申告の特典を受けることができません。
【例示】
平成30年3月期(期限後申告)・・・青色
平成31年3月期(期限後申告)・・・白色
令和02年3月期(期限内)・・・白色、取消通知書
令和03年3月期(期限内)・・・白色、承認申請書再提出
令和04年3月期(期限内)・・・青色
Ⅴ.青色申告の再承認後の繰越欠損金
白色の期間に発生した欠損金は繰り越すことができませんが、青色申告の承認期間中の欠損金は、繰り越すことができますので、上記Ⅳ.【例示】の平成30年3月期以前の青色の繰越欠損金が残っている場合には、繰り越すことができます。
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