事業用の減価償却資産を年の途中で売却した場合の減価償却費の計算はどうなるの!?

令和元年分確定申告書の申告期限は、新型コロナウイルスの影響により、延長されましたが、令和2年分確定申告書の申告期限は、今後どうなるかわからないため、早めに申告準備を進めている方もいるかと思います。

また、今年の途中で事業用減価償却資産を売却し、減価償却費の計算を月割計算するのか否か迷う方もいると思います。

そこで、今回は、事業用減価償却資産を売却した場合の減価償却費の計算について、解説いたします。

 

Ⅰ.事業用減価償却資産とは

事業用減価償却資産とは、文字通り、事業所得や不動産所得などを得るために使用する減価償却費が発生する資産となります。

具体的には、建物(マンションを含む)や建物付属設備や構築物や備品などとなります。

 

Ⅱ.原則的な取扱い

所得税の減価償却費は、法人税の減価償却費と違い、強制償却となりますので、毎年計算して必要経費に算入していくことになりますので、所得税の計算で減価償却費を考慮せず、確定申告した場合には、後から取り戻すことができません。

また、減価償却費を計上する資産は、年末(12/31)まで所有しているものに限ります。

参考のため、所得税法第49条では、下記の通り定められております。

【第49条  減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法】
居住者のその年12月31日において有する減価償却資産につきその償却費として第37条(必要経費)の規定によりその者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその者が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額とする。

 

Ⅲ.例外的な取扱い

それでは、年の途中で減価償却資産を売却した場合には、その減価償却資産に係る減価償却費は、売却した年で必要経費に算入することができないのかと疑問に思う方もおります。

こちらは、減価償却費を①必要経費に算入することもできるし、②必要経費に算入せず、売却した原価(=取得費)とすることもできます。

具体例を示しますと下記の通りとなりますが、所得の合計額という意味では、どちらを選択しても同額となります。

【具体例】
・減価償却資産の譲渡価額1000万円
・令和2年1月1日時点の減価償却資産の簿価600万円
・令和2年1月1日から売却までの減価償却費200万円

(1)売却までの減価償却費を必要経費に算入する場合
→減価償却費200万円、譲渡所得600万円※1となります。減価償却費は、事業所得や不動産所得に反映させます。
※1 1,000万円-(600万円-200万円)

(2)売却までの減価償却費を必要経費に算入しない場合
→減価償却費ゼロ円、譲渡所得400万円※2となります。
※2 1,000万円-600万円

参考のため、所得税基本通達49-54では、下記の通り定められております。

【49-54  年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費の計算】
年の中途において、一の減価償却資産について譲渡があった場合におけるその年の当該減価償却資産の償却費の額については、当該譲渡の時における償却費の額を譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に含めないでその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額計算上必要経費に算入しても差し支えないものとする。
(注) 当該減価償却資産が令第6条第1号、第2号及び第8号に掲げる建物及びその附属設備、構築物及び無形固定資産である場合には、当該償却費の額について譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に含める場合とその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する場合では、事業税における所得の計算上の取扱いが異なる場合があることに留意する。

 

Ⅳ.まとめ

所得税の場合には、事業用資産を売却した場合の所得区分は、事業所得や不動産所得ではなく、譲渡所得となります。そのため、減価償却費相当額を①事業所得や不動産所得、又は、②譲渡所得のいずれかで申告するか有利・不利も含めて選択することになります。

ですので、・不利の判定や譲渡所得の計算方法に不安がある方は、弊所までお問い合わせください。

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